空が澄み渡り、過ごしやすくなる10月は、星空観察の絶好のシーズンです。秋の深まりとともに、夏の星座から秋の星座へと星空の主役が移り変わり、様々な天文現象を楽しむことができます。
この記事では、2025年10月に日本で観測できる見どころ満載の天文現象をカレンダー形式でご紹介するとともに、それぞれの現象をより楽しむためのおすすめの天文器材についても解説します。
日付 | 現象 |
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10月6日(月) | 中秋の名月 |
10月7日(火) | 満月(スーパームーン) |
10月9日(木) | 10月りゅう座流星群が極大 |
10月13日(月)~14日(火) | 月と木星が接近 |
10月19日(日)~20日(月) | 細い月と金星が接近 |
10月21日ごろ | レモン彗星が4等前後 |
10月21日(火) | オリオン座流星群が極大、新月 |
10月30日(木) | 水星が東方最大離角、上弦の月 |
秋の風物詩、中秋の名月(十五夜)は2025年は10月6日です。旧暦の8月15日にあたるこの日、お団子やススキを飾って月を愛でる習慣は、古来より日本に受け継がれてきました。
ひとつの興味深い点は、中秋の名月が必ずしも満月とは限らないことです。今年は満月の前日にあたり、月はほぼ丸く、肉眼では満月と見分けがつかないほどです。名月の近くには土星も輝いており、明るい月と惑星の共演を楽しめます。次の満月が同じ日になるのは2030年ですので、今年のずれにも思いを馳せてみるのも良いでしょう。
10月りゅう座流星群の活動が10月9日に極大を迎えます。見頃は8日深夜で、放射点が高い時間帯となります。
この流星群は、対地速度が遅く、ふわっと流れる独特の風情が特徴です。しかし、もともと出現数が少ない上に、今年は満月過ぎの明るい月明かりの影響が大きいため、観測条件はあまり良くありません。1時間に数個程度と予想されますが、母天体であるジャコビニ・チンナー彗星が2025年3月に回帰したため、突発的に活発になる可能性もゼロではありません。やや気長に観望してみてください。
2025年1月に発見されたレモン彗星(C/2025 A6)が、10月に双眼鏡で観察しやすい明るさになると期待されています。
21日には地球に最接近し、見かけの動きが速くなります。星図アプリで位置を確認し、おおぐま座の足元の星や、うしかい座のアルクトゥールスなどの明るい星を目印に、双眼鏡で探してみましょう。彗星は恒星のように点ではなく、ぼんやりと淡く広がって見えるのが特徴です。
10月20日の明け方、東の低空で、とても細い月と、明るく輝く金星が接近する美しい光景が見られます。
この時の月は新月の約40時間前で、光っている部分はわずか2%という極細の月です。金星が圧倒的に明るいので、まずは-3.9等の輝きで目立つ金星を見つけ、その右下付近を注意深く眺めてみてください。肉眼では少し見つけづらいかもしれませんが、双眼鏡を使うと、この幻想的な共演をはっきりと観察できます。
オリオン座流星群が10月21日に極大を迎えます。極大時刻は21時ごろですが、放射点が高くなる深夜0時以降から夜明けまでが一番の見頃です。
今年は新月と極大が重なるという絶好の条件で、月明かりの影響がまったくありません。1時間に10個程度と多くはありませんが、放射点が高い時間帯を中心に、空の広い範囲をゆったりと眺めてみましょう。流れ星はオリオン座の方向だけでなく、どこにでも現れます。ハレー彗星を母天体とする、速度の速い流星です。深夜は冷え込みますので、防寒対策を万全に。
10月30日、水星が太陽から最も離れる東方最大離角となります。夕方の西南西の低空に位置しますが、日の入り45分後の高度は約3度と非常に低く、観察は難しいでしょう。
近くに金星のような目印もないため、見つけるには西南西の空がひらけた場所で、双眼鏡を使って根気よく探す必要があります。チャレンジしてみたい方は、スマートフォンの星図アプリで正確な位置を確認してから挑戦してみてください。
観測対象 | おすすめ器材 | ポイント |
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中秋の名月 | 肉眼、天体望遠鏡 | 肉眼で風情を。望遠鏡でクレーターなどの詳細を。 |
レモン彗星、水星 | 双眼鏡(7~10倍程度) | 淡い彗星や低空の水星を探すのに必須。手軽で視野が広い。 |
流星群全般 | 肉眼、レジャーシート | 道具は不要。広い空を楽な姿勢で見渡すことが重要。 |
土星の環、木星 | 天体望遠鏡 | 土星の環の細さや、木星の縞模様・ガリレオ衛星を観察。 |
計画・確認 | 星図アプリ(例:星空ナビ) | 彗星や惑星の位置確認、観測計画に便利。 |
ソフトウェアのすすめ
観測計画の立案には「ステラナビゲータ」、撮影には「ステラショット」、画像処理には「ステライメージ」などのソフトウェアを活用すると、より深く楽しむことができます。
2025年10月は、日本の伝統文化を感じる「中秋の名月」から始まり、条件バツグンの「オリオン座流星群」、双眼鏡で挑戦したい「レモン彗星」、そして美しい惑星のランデブーと、見所が盛りだくさんです。
ご紹介したように、観測する現象によって適した器材は異なります。双眼鏡一つあるだけで、見える世界がぐんと広がります。秋の夜長に、ぜひ夜空を見上げて、壮大な宇宙のショーを楽しんでみてはいかがでしょうか。