天文写真の世界を知る
3つの分野完全ガイド
星景・惑星・ディープスカイ。撮影対象も機材も手法も異なる3つの天文写真の世界を、この1ページで体系的に解説します。
3つの撮影分野
あなたが撮りたいのは、どの星空ですか?

Starry Landscape
自然風景や建造物を前景に、星空や星の軌跡を背景に撮る、最も気軽に始められる分野。超広角レンズや魚眼レンズを使用。

Planetary Imaging
太陽系の惑星や月、太陽を高倍率で捉える分野。短時間露出で大量に撮影し、鮮明なコマを選んで積層する。

Deep Sky Imaging
太陽系外の星雲・星団・銀河を撮影する最もハードな分野。撮影対象やスタイルに応じて、天体用カメラや赤道儀などを組み合わせます。
星景写真
Starry Landscape星景写真とは
星景写真は、山や湖などの自然風景、あるいは建造物を前景に入れ、星空や星の軌跡を背景として撮影する方法です。風景と星空を一緒に写すため、広い範囲を写せる超広角レンズや魚眼レンズがよく使われます。焦点距離はおおむね14〜35mmが目安で、一般的には14〜24mmや16〜35mmのレンズ、または魚眼レンズが選ばれます。星を明るく写すには、開放F値の小さいレンズが有利です。
レンズの選び方
- 焦点距離:14〜35mm の超広角または魚眼
- 代表的なレンズ:14-24mm、16-35mm、魚眼レンズ
- 明るさ:絞りは大きいほど有利(星光をより多く集められる)
- 目安露出:開放絞り・ISO 3200〜6400・15〜20秒程度(500ルールを参考に、焦点距離が長いほど露出を短く)
推奨機材
案1:カメラ+広角レンズ+三脚(星景写真の定番スタイル)
<こんな方>天の川や星空を、山・海・建造物などの地景と一緒に写したい方。最も一般的な星景写真の組み合わせです。
| カテゴリ | 推奨モデル |
|---|---|
| カメラ | デジタル一眼レフ/ミラーレス(Canon / Nikon / Sonyなど・お手持ちの機材でOK) |
| レンズ | 超広角・大口径レンズ 14-24mm f/2.8クラス |
| 三脚 | SV225T(アルミ製・安定性重視)/ SA402(液圧雲台付き) |
| アクセサリー | レリーズ/リモートシャッター |
案2:CS魚眼レンズ+天体カメラ+三脚(全天監視・流星記録向け)
<こんな方>流星の記録・全天モニタリング・タイムラプスなど、手軽に広い空を写したい方。※芸術的な星景写真(作品づくり)とは用途が異なります。
| カテゴリ | 推奨モデル |
|---|---|
| CS魚眼レンズ | CSマウント魚眼レンズ |
| 天体カメラ | SV705C/SC715C(プラネタリーカメラ) |
| 三脚 | SV225T(アルミ製・安定性重視)/ SA402(液圧雲台付き) |
惑星写真
Planetary Imaging惑星写真とは
惑星撮影は、木星や土星など、太陽系内の惑星を主な対象とする撮影分野です。月や太陽も、撮影機材や手法に共通点が多いことから、広い意味で同じ分野として紹介されることがあります。また、国際宇宙ステーション(ISS)などの人工衛星を撮影する場合にも、惑星撮影に近い機材や手法が用いられます。なお、太陽を撮影する際は、必ず専用の太陽観察・撮影用フィルターを使用してください。
カメラの選び方
惑星撮影では、惑星の細部を捉えるために、高速で連続撮影できるカメラがよく使われます。撮影した大量の画像から鮮明なコマを選び、位置を合わせて合成することで、ノイズを抑えながら細部を引き出します。一方、ディープスカイ撮影では、星雲や銀河などの淡い光を記録するため、低ノイズ性能や感度に加え、長時間露光への対応が重要です。カメラは撮影対象や望遠鏡のイメージサークル、画角、予算などに合わせて選びましょう。
撮影条件の3要素
- 天体撮影では、雲や雨、濃い靄などがあると撮影が難しくなります。天候に加えて、惑星撮影では次の条件も画質に大きく影響します。
- 大気透明度 — 空気の澄み具合。汚染が少なく靄のない状態がベスト。季節だけで一概には判断できず、観測地の気象条件によって変わります。
- シーイング(大気の揺らぎ) — 大気の揺らぎの度合い。望遠鏡像のシャープネスに直結し、悪い日は観察すら困難。
- 惑星の高度 — 地平線からの高さ。高度が高いほど大気の影響を受けにくく、撮影に有利です。
基本の撮影法:「短時間露光・多数枚スタック」
ディープスカイ撮影では長時間露光が一般的ですが、惑星撮影では、多くの対象に対して長時間露光はあまり適していません。
惑星撮影でよく用いられるのは、「短時間露光・多数枚スタック」という手法です。1フレームあたりの露光時間を短くして大量の画像を撮影し、その中から画質の良いフレームを選んで合成することで、ノイズを抑え、より鮮明な画像を得ることができます。
また、惑星は自転しているため、撮影に時間をかけすぎると、惑星表面の模様が流れて写ることがあります。そのため、できるだけ短時間で効率よく撮影することがポイントです。撮影条件が良い夜には、ほかの天体の撮影にも挑戦してみましょう。
では、撮影するフレーム数はどのくらいが適切なのでしょうか? 基本的には、画質を保てる範囲でできるだけ多くのフレームを撮影するのがおすすめです。数千〜数万フレームを撮影することも珍しくありません。フレームレートの高いカメラを使用すれば、数万フレームでも数分程度で撮影できる場合があります。
望遠鏡選びの3要素
- 精度 — 光学面の精度は、望遠鏡の結像性能に関わる要素のひとつです。ただし、波面誤差の表記方法や測定条件によって数値の意味が異なるため、「1/4波長」などの数値は、メーカーが示す測定基準とあわせて確認しましょう。
- 有効径 — 有効径が大きいほど、理論上の分解能は高くなります。ただし、実際に得られる細部の見え方は、大気の状態や光学系の性能、ピント合わせなどにも左右されます。
- 焦比 — 焦点距離を有効径で割った値で、「F値」または「f/」で表します。ディープスカイ撮影では、短い露光時間で効率よく光を集めるため、明るい光学系(小さいF値)が有利な場合があります。一方、惑星撮影では、焦比だけでなく、適切な拡大率やカメラの画素サイズ、シーイングなどを考慮して撮影倍率を決めます。
焦点距離が足りない場合はバローレンズ(焦点延長レンズ)を使用。例:F5の鏡筒に2xバローで F10相当に。
なお、当店の惑星撮影向け鏡筒MK90 / MK105 / MK127(マクストフ・カセグレン式)は、元々焦点距離が長くF値が大きい設計(例:MK127は口径127mm・焦点距離1500mm・f/11.8)です。そのため、バローレンズなしでも惑星を高倍率で拡大して撮影でき、初心者にも扱いやすい構成になっています。
推奨機材
| カテゴリ | 推奨モデル |
|---|---|
| 望遠鏡(鏡筒) | MK127/MK105/MK105PRO/MK90 |
| カメラ | SV705C/SC715C(プラネタリーカメラ) |
| ガイドスコープ | SV165 / SV106 |
| ガイドカメラ | SV905C |
| バローレンズ | SV213(2x)/ SV216(3x) |
| ADC(大気分散補正) | SV199 |
| 赤道儀 | / |
| 三脚 | SV225T(アルミ製) |
現像ソフト定番3点セット
- AutoStakkert! 3 — フレームの選別・位置合わせ・スタック(合成)
- RegiStax 6 — ウェーブレット処理によるシャープネスの調整
- Adobe Photoshop — ハイライト・シャドウ・色調などの調整
ディープスカイ撮影
Deep Sky Imagingディープスカイ天体とは
ディープスカイ天体は、太陽系外にある天体のうち、主に星雲・星団・銀河などを指します。肉眼で見える天体は限られますが、双眼鏡や望遠鏡を使うと、条件次第で多くの天体を観察できます。代表的な天体カタログには、メシエカタログ(M)、NGCカタログ、ICカタログなどがあります。
なお、太陽系内の彗星も、星雲・銀河とほぼ同じ機材・撮影手法を用いることから、深空撮影の対象として扱われます。
なぜ長時間露出+スタッキングが必要なのか
深空天体は肉眼ではほとんど見えないほど光が暗いうえ、その動きは「相対的に静止している」と見なせます。銀河の自転周期は数億年にもおよび、人間の撮影時間の中では実質的に変化しない、いわば「壁に貼られた絵」のような存在です。だからこそ、光をゆっくり集める長時間露出が有効なのです。
- 長時間露出:暗い天体の光を長時間センサーに当てて記録する技法
- スタッキング(画像合成):同じ対象を撮影した多数枚を後処理で重ね合わせ、累積露出を得る技法
露出を1回で極端に長くするとノイズや星の流れが目立つため、現実的には「中程度の露出」+「スタッキング」の組み合わせが基本になります。短時間露出を多数枚重ねることで、ノイズが平均化されて滑らかになり、暗い星雲の構造が浮かび上がります。
深空天体の分類

深空天体のスペクトルと発光の仕組み
深空天体は「どうやって光を放っているか」=スペクトル(光の波長ごとの強さの分布)で3タイプに大別できます。スペクトルを知ると、星雲ごとに合うフィルターが違う理由が明確になります。
| タイプ | 発光の仕組み | スペクトル | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 反射星雲 | 周囲の恒星の光を反射して輝く(「照らされている」) | 連続スペクトル/吸収スペクトル | M45プレアデス星雲、M78、NGC 7023アイリス星雲 |
| 輝線星雲(放出星雲) | 高温の恒星に励起され、星雲ガス自身が発光する(「自分で光っている」) | 輝線スペクトル(特定波長のみ) | M42オリオン大星雲、M16わし星雲、NGC 1499カリフォルニア星雲、NGC 2237ロゼット星雲 |
| 暗黒星雲 | 背後の星の光を吸収・散乱し、シルエットとして浮かび上がる(「引き立たされている」) | 連続スペクトル(透過光) | 馬頭星雲、M45周辺、M81/M82周辺 |
覚え方は簡単です。反射星雲=照らされている/暗黒星雲=引き立たされている/輝線星雲=自分で光っている。
なお、実際の天体には複合型もあります。M42オリオン大星雲は輝線星雲と反射星雲が共存する代表例で、馬頭星雲の周辺領域は輝線・反射・暗黒の3タイプすべてが揃うことで有名です。
ナローバンドフィルターとハッブルパレット
輝線星雲の光は、輝線スペクトルと呼ばれ、特定の波長だけが強く放射されるのが特徴です。主な輝線は以下の通りです。
- SII(671.6nm・一価の硫黄イオン)— 赤い領域の輝線
- Ha(656.3nm・水素α線)— 赤い領域の輝線
- OIII(500.7nm/495.9nm・二価の酸素イオン)— 青緑の領域の輝線
- Hb(486.1nm・水素β線)— 青い領域の輝線
実用的にはこの中のSII・Ha・OIIIの3本を押さえておけば十分です。星雲撮影では、この3本の輝線波長だけを選択的に通すナローバンドフィルターを使います。輝線スペクトルの波長帯だけを透過させることで、夜空全体の光害(ナトリウム灯など)や月明かりを大幅にカットし、星雲のコントラストを一気に引き出せるのが利点です。
代表的なカラー合成手法ハッブルパレットでは、SIIを赤、Haを緑、OIIIを青に割り当て、ゴールドとコバルトブルーが混ざり合う「ハッブルカラー」を表現します。SVBONYでは、HaとOIIIの2本を1枚で通すSV220(デュアルバンド)、SII・Ha・OIIIをそれぞれ単独で通すSV227(SHO シングルナローバンド)をご用意しています。
推奨機材
| カテゴリ | 推奨モデル |
|---|---|
| 望遠鏡(鏡筒) | SV535/SV555/SV503/SV550/MK105/MK127 |
| メインカメラ | SV405CC/SV605CC/SV605MC |
| フィルター | SV220/SV227 |
| フラットナー |
鏡筒に適合する専用品(例えば:SV193) |
| バローレンズ | SV213(2x)/ SV216(3x) |
| 三脚 | SV225T |
| 防曇ヒーター | SV172 / SV192(レンズ周長に合わせて選択) |
| 補助機材 | EAF電動フォーカサー、フラットパネル、コマコレクター、赤道儀(自動追尾) |
| 設営機材 | 耐荷重を重視した赤道儀 + 高安定三脚 |
フィルター互換性:SV227(SHO)ナローバンドフィルターは焦点比F5以上の鏡筒に対応しています(F値が小さい鏡筒に取り付けると、光の入射角の関係で性能を発揮できません)。そのため、この案ではf/7のSV503-102ED/80EDを推奨しています。明るいf/4.5のSV555を使う場合は、公式キットでも採用されているSV220デュアルバンド(Hα・OIII)をご検討ください。
その他共通:パソコンまたは天文ボックス、ポータブル電源、機材を運ぶ車。
セットアップイメージ
ディープスカイ撮影は、使用する機材が多いことが特徴です。赤道儀・鏡筒・カメラ・ガイドシステム・ポータブル電源などを組み合わせ、必要な機材を一式持ち込んで撮影に臨むスタイルが一般的です。













